
ペットに死が迫っていると気づいたとき、最初のショックが起こります。それはペットが生命にかかわる事故に遭遇していても、病気で死にかけていても、死の原因に関係なく非常に大きな絶望の淵にあなたを突き落とします。あなたは茫然自失の状態に陥り、日常生活さえも変わってしまいます。思考力や体力も低下してしまいます。こうした症状は感情の過熱状態を引き起こす寸前の状態です。強力なパワーに圧倒されてしまう心理的反応があなたの思考を脱線させ、同時に感覚まで失わせてしまうのです。
あなたはショックで体の力が抜けてしまい、ものを考えることができなくなります。酷い時には何に対しても反応ができず、まるで腑抜け状態に陥ってしまうのです。
ほとんどの人が「信じられない」と、ペットの死を目にした瞬間、言うかもしれません。明らかにペットが死んでしまったという具体的な証拠を目の前に突き付けられても、自分のペットが死んでしまったことを何度も自問するでしょう。
私たちの心理的な防御力は極めて強力です。強いショックであろうと、しっかりその状況を閉ざしてしまいます。つまり、いきなり自分の中に閉じこもってしまい、強い衝撃に反発しようとします。まるで催眠術にかかってしまったかのようです。厳しい知らせを受け入れたくないのです。ある種の記憶喪失のタイプは、激しいショックと不信感が引き金となるといわれています。私たちは過酷な状態からやっとのがれ、記憶を閉ざしてしまわないと生きてゆけないほど、感情的トラウマを受けた後、生還した人の話を耳にすることがあります。これが深刻な記憶喪失の原因となる事が多いのです。
影響を受けないようにと心理的に防御ができたとしても、ペットの死に直面したあなたの思考は立ち往生してしまうことでしょう。思考には一定の許容量があり、問題の感情が一度に押し寄せたりすると、その許容範囲を超えてしまいます。激烈な感情からあなたを守る事が難しくなります。このような衝撃から私たちを保護するのがこの防御システムなのです。
時には、一時的なショックで目の前に起こっていることを現実として受け入れることが出来ない場合があります。それよりも、もっと厳しい状況に立たされるとショックの度合いが逆に半減します。それにいろいろな感情が一気に浮上するとなると、思考のねじれはさらに深刻なものになります。
正常なショック状態や不信感を持つ事は、異常なことではなく理屈に適った反応です。こうした反応は他に新しい問題が浮上すると、すぐに消滅してしまうものです。
あなたがペットの死を慎む期間に体験する苦悩と厳しい感情やストレスは、あなたの心の持ち方や精神的な安定を計るバロメーターで、あなたの精神の健全さの度合いを測る為の良いチャンスです。あなたはペットの死と向き合って辛い時期を過ごすことになりますが、この状態をうまく切り抜ける事が出来れば、精神の健全さに問題はありません。